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世の中にカッコイイデニムのトップスがない。
今から約15年前、デザイナーの心をかすめたのはそんな思いだった。
ならば自分が──そう思い立つやデニムづくりのスペシャリストである林芳享氏に連絡を取る。そして共同作業で生み出されたのが、いまやブランドの顔ともなったWRINKLE SHIRTだ。 -
WRINKLE SHIRTの最大の特徴であるしわ。特殊加工によって深く刻まれたしわがもたらすのは、こなれた見た目だけではない。誰が、どんなインナーやボトムスの上に羽織ってもキマる絶妙なシルエット。ナチュラルストレッチともいうべき着心地の良さ。それらを実現するのも、
実はこのしわなのだ。
ヴィンテージのような味わいを醸すデニムシャツとチェックのネルシャツ。そんなアメカジの王道アイテムをイタリア仕込みの
パターンと加工で仕上げたWRINKLE SHIRT。デニムシャツにあしらわれたメタルのフック、ネルシャツにセットされた
ジュラルミンのボタン。そんなパーツ使いにもサジ加減絶妙なアレンジの妙が光る。
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Junhashimoto デザイナー 橋本 淳氏
junhashimotoにとってWRINKLE SHIRTとは
どういう存在ですか?
橋本ひとことで言えばニューアメカジの象徴です。服作りを始めてからずっと、僕はカジュアルをカジュアル以上のものに昇華しようと考えてきました。そうなると当然アメカジを避けて通ることはできません。なかでもデニムシャツやネルシャツは、ごく普通のアメリカ服の代名詞みたいなもの。そんな、いわば“しょうもない”アメカジアイテムも、やり方次第でカッコイイものに昇華できるぞ、ということを証明したかったんです。結果、初めて見る人には、とてもインパクトの強いアイテムになりました。でも、その奥に、素材のこともアメカジ自体もちゃんとわかっている人がいることが重要。そのために林さんに声をかけさせてもらったんです。
デニムデザイナー 林 芳享氏
共同で服づくりをやろうと決まったとき、どんなお話しを
されたんですか?
林何かカッコイイデニムのトップスを作りたいという話だったので、まずは生地を選んで持って行きました。ちょっとフニャフニャの甘撚りで、洗い込んでいくといい感じに縦落ちするようなデニム地でしたね。で、見せたら「これならシャツですね」となったので、だったらカルペディエムのウォッシャブル・レザーシャツの型がいいじゃないかと思いましたね。以前カルペにいた橋本さんはちょっと躊躇したみたいだけど、カルペディエムはデニムを扱わないブランドだし、レザーでなければ遠慮することはないでしょう、ということでスタートしたんです。フロントもボタンではなくメタルのフックにしよう、と。実はアレ、服用ではなく元々はヨットのパーツなんですよ。
WRINKLE SHIRTの最大の特徴であるしわについて、そのこだわりや開発秘話を教えてください。
林まあ大変やったね。シャツのカタチにした後に一枚ずつ形態安定の液を垂らして捻るんだけど、最初は濃度が濃すぎて破れたりしてね。固まって戻らないから裂けるんですよ。かといって薄すぎるとすぐにしわが取れてしまう。そういう試行錯誤の繰り返しを経て今にいたってるというわけです。捻るのもなかなか大変で、全部手作業。乾燥機にも掛けられないから捻ってドーナツ状にしたシャツを丸一日陰干しするんです。
橋本しわの効能として着心地の良さというのもあります。コレ、着るとすごく細身に見えるんですけど、元々のサイズ感はけっこうデカい。それがしわによってタイトに仕上がっているからナチュラルストレッチみたいに伸びて、すごく着やすいんですよ。
林しかも誰が着てもカッコよく見える。大きめのシャツがしわで細くなっているから、着る人の体型に応じて体に吸い付くんです。最初、工場の人が「こんなシャツ売れるんか?」って言うから、試しに着させてみたら、すぐに「あ、コレは売れるわ。カッコイイもん」ってね(笑)さらにいいのは、どんな格好にも似合うところ。モノはカッコいいけどこのコーディネートしかできないとか、このジャンルの人にしか着こなせませんじゃ、長く続く商品にはならなかったと思います。その点コレはスウェットパンツの上に羽織ってもカッコイイしね。
橋本縦じわだけをつけているところもポイントですね。グシャグシャのしわでは、ただの汚いシャツに見えるけど、縦じわだとモードになる。体に沿ってシュッと見えるんですよ。パターン自体もサイズ感の割にはウエストをシェイプしましたから、背中が逆三角形に見える。目指したのは、女性が思わずすがりたくなるような逞しい背中です(笑)
デニム素材のほうはフロントがメタルのフックですが、ネルシャツにはフックが付いていませんね。
橋本デニム素材から始めたシャツでしたから、新しい素材を追加するタイミングで変えたいというのもあったし、B.D.シャツの袖口にも使っているジュラルミンボタンという新たなアイコンができたので、これでいこう、となりました。ただし、こっちも普通のボタンフロントではなく、左右両方の前立てにボタンホールがあって、カフスボタンスタイルのジュラルミンボタンを好きなボタンホールで留める仕様になっています。そもそも羽織りものだからボタンはいらないようなもの。だから、フックの場合もそうですが、一カ所引っ掛けられればいいんです。あと、この仕様にしたのにはもうひとつ裏話があって。ある有名なミュージシャンの方が昔からこのシャツを愛用してくれてるんですが、ギターを傷つけちゃうからフックを外してくれって、ずっと言ってたんです(笑)。そういうこともあって、ネルのほうはボタン仕様にしたんですよ。
しわにばかり目を奪われがちですが、デニムにしてもネルにしても、生地そのものの表情もいいですね。
橋本パッと見、古着みたいでしょ。ただ捻っただけではデニムもネルも硬いから、まずは生地をへたらせて色落ちもさせてから捻る。初めに生地の顔を作ることが大事なんです。
林同じチェックでも配色によって染料の抜け方が違いますから、加工の方法もいちいち分けています。結構簡単にやっているように見えて、右から左という部分はひとつもありません。きっと手を抜いて作っても一瞬同じように見えるものはできるでしょう。でも、着た時に同じようには見えないはずです。いつも言っていることですが、結局僕がデザインしているのは、服を着たときの姿なんですよ。
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WRINKLES DENIM HOOK SHIRT
1060000010¥43,200(税込)
独特のシワ加工とユーズド感あるデニム生地がうまく絡み合う人気のシャツ。それはベテランのしわ職人が一つ一つ手搾りで作成しているため、モードな縦しわしかおこらない。
ベイキングによる硬質な形態安定など多くの工程を踏んで完成された逸品。 -
WRINKLES CHECK SHIRT
1060000009¥37,800(税込)
普通のボタンフロントではなく左右両方の前立のボタンホールで、カフスボタンスタイルのジュラルミンボタンを好きなボタンホールで留める新スタイル